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ブランシュ・セルヴァ作曲  ピアノ曲 「太陽の鐘(イタリアの鐘)」 

楽譜の冒頭には、
ベルナルデット・モーリス・ドニへ と記されています。
ナビ派、フランス象徴派を代表する画家のモーリス・ドニには、
ベルナルデット、アンヌマリー、ノエルと3人の娘がおりました。
そのうちの一人ベルナルデットへ献呈されているわけです。
モーリス・ドニは、家族の肖像をたくさん描いていますし、写真もたくさん残っております。
画家、音楽家・・・同時代のアーティストたちのつながりを想像しただけでも面白いですね。

さて、この曲は
 
L'Album pour enfants petits et grands,un recueil de morceau pédagogiques de 22 auteurs membres ou proches de la Schola Cantorum
「スコラカントルムの作曲家たち22人による、こども、または大人の学習者のための練習曲集」に収められています。

ブランシュ・セルヴァはこの曲を1904年の秋に作曲し、1905年に出版されました。そしてこの曲の教育目的について、こうコメントを残しています。
 ”私は一人の生徒に、まったく不可能なことを強いるのではなく、しかしながら、ある難しさ=課題 を与えています。
それは、ペダルの繊細な使い方、「鐘」の音をピアノで表現するところにあります”と。

この曲を弾いてみるとその意味がじわじわ伝わってきます。
「鐘」は澄んだ音で響かせたい、
金属でできた「鐘」が鳴っている響き、と 「うた」 の部分の音色の変化が求められますし、
大きな鐘、小さな鐘、近くで鳴っている鐘、遠くから聞こえて来る鐘の音を表現するときの音量の調節、
弾きながら、耳を澄ませて聴く勉強にもなります。
また、これらのことを実現させるために、適した指使いを考えること、そして八分音符と三連符を同時に弾きわけるのは、こども、いや大人の学習者にも難しいのです。鐘の音と歌でそれを弾き分けさせるところが素敵です。さらに情景を想像させることで、詩的な想像力を喚起させる素敵な作品です。